手術は、水晶体を取り囲む外側の透明な袋(水晶体嚢)を残して、中の濁りを超音波で砕いて取り除き、代わりに人工の眼内レンズを残してある水晶体嚢の中に挿入します。基本的に点眼麻酔で施行します。痛みはほとんどありません。
傷口は約2mm以下であり、術後もほとんど目立つことはありません。
手術時間は5分程度で、手術室滞在時間は約10分ほどです。
以前の白内障手術は、水晶体全体を取り出す手術でしたので、角膜を大きく切り開く必要がありました。
術後も厚い凸レンズのメガネによる遠視矯正が必要でした。
しかし、超音波で水晶体を砕く方法が開発され、眼内レンズが改良されて、切開創は年々小さくなってきました。
1980年代には11ミリ切開していたのが、90年代は6ミリ、2000年代に入ると4ミリになり、今ではわずか2ミリの切開で行うこともあります。切開創を小さくできるようになったため、手術による眼球の負担が減り、安全性も高まり、術後に角膜がゆがんで乱視になる頻度や程度も低下しました。
眼内レンズも最近は、まぶしさをやわらげる色つきレンズや、多焦点レンズも選べるようになっています。
多焦点眼内レンズについて
通常の保険適用のレンズ(単焦点眼内レンズ)はピントが合う距離が1点なので、
遠くあるいは近くのいずれかを選択します。
遠くにピントを合わせると、近くを見る際に老眼鏡が必要となります。
近くにピントを合わせると、遠くを見る際に遠用眼鏡が必要となります。
多焦点眼内レンズは、ピントの合う距離が複数あることから眼鏡の煩わしさを軽減することが可能です。
若い頃のように、すべての距離がメガネなしでハッキリとまではいきませんが、
遠くの景色や読書などは裸眼で出来るようになります。
細かい作業や、レンズで補えない距離等は眼鏡を併用する必要はあります。
多焦点レンズのメリット
・眼鏡に依存しない生活ができる。
・眼鏡の煩わしさを軽減できる。
多焦点レンズのデメリット
・単焦点と比較すると遠近それぞれの見え方のスッキリ感が少し弱い。
・眩しさを感じやすい(ハロー・グレア)
当院では、各レンズの強みを活かし、事前にライフスタイルを詳しくお伺いし、
患者様のライフスタイルに合わせたレンズの種類を選定、ご提案させて頂きます。
多焦点レンズの費用
費用はレンズの種類により異なります。
・多焦点レンズを用いた選定療養
使用する眼内レンズ:選定療養対象の多焦点眼内レンズ
白内障手術技術料は通常の保険診療で賄う。
多焦点眼内レンズ費用のみ自己負担となる。
選定療養対象レンズ
ZMB00 / ZLB00 / ZKB00(AMO社)
2焦点眼内レンズ(遠方・近方)
遠方と近方にピントが合うように設計されています。
近方のピントは30cm、40cm、50cmに合う3種類があり、ライフスタイルによって
使用するレンズを選択出来ますが、乱視がある方には不向きのレンズです。
レンズの特性上、ハローグレアが出やすいため夜間の運転には注意が必要です。
健康保険一部負担金+片眼8万円
IQ PanOptix(パンオプティクス) /IQ PanOptix Toric(Alcon社)
乱視矯正ができる3焦点眼内レンズ(遠方・中間・近方)
国内初承認を受けた三焦点眼内レンズで、2焦点眼内レンズを改良し、
遠方、中間(60cm)、近方(40cm)にピントが合う構造になっています。
中間距離にも焦点が合うため、パソコンの画面や、料理の手元、カーナビなどが
2焦点に比べ見やすくなりました。
手元や遠くの見えかたは2焦点レンズと同等です。
可能な限り若い頃の様な自然な見え方を追求したい方にお勧めです。
健康保険一部負担金+片眼21万円(乱視用は25万円)
・プレミアム多焦点レンズを用いた自由診療
使用する眼内レンズ:選定療養対象外のプレミアム多焦点眼内レンズ
白内障手術を含め、全て自己負担となる。
LENTIS MplusX(レンティスエムプラスエックス) /LENTIS MplusX Toric(Oculentis社)
乱視矯正ができる完全オーダーメイドの2焦点眼内レンズ(遠方・近方)
他のレンズでは作れない強度の近視や乱視にも対応可能です。
他のレンズより細かい精度で作製するため、
世界最高性能のプレミアムな多焦点眼内レンズとして世界的に高い評価を得ています。
両眼手術代+1か月診療代:99万円(税込) 乱視用は+11万円
※1か月以降の診療は保険診療へ切り替わります。
Acriva Trinova(トリノバ)/ Acriva Trinova Toric(VSY Biotechnology社)
乱視矯正ができる3焦点眼内レンズ(遠方 中間 近方)
多焦点のデザインは累進焦点拡張型レンズである。
近方はやや劣るが、遠方・中間のバランスが良いレンズです。
色彩豊かで、コントラスト感度がほどほど良く満足度が高い。
他のレンズに比べ夜間のハロー・グレアが少ないといわれている。
両眼手術代+1か月診療代:119万2千円(税込) 乱視用は+11万円
※1か月以降の診療は保険診療へ切り替わります。